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労働法改正情報

雇用保険マルチジョブホルダー制度(令和4年1月1日施行)

2022.02.23

雇用保険マルチジョブホルダー制度(令和4年1月1日施行)

【1】概要

  • 65歳以上の⽅を対象として令和4年1⽉1⽇から、「雇⽤保険マルチジョブホルダー制度」が施⾏されます。
  • この制度により、以下の要件を全て満たす場合、労働者本人が自身の住居所を管轄するハローワークに申し出ることで、申出を⾏った⽇から特例的に雇⽤保険の被保険者(マルチ⾼年齢被保険者)となることができます。
  • 今回は、改正のポイントと厚生労働省が作成した本制度のQ&Aを抜粋してご紹介します。

【2】法改正のポイント

①適用対象者の要件

適用対象者の要件
・複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
・2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して、1週間の所定労働時間が20時間以上であること
・2つの事業所のそれぞれの雇⽤⾒込みが31日以上であること

②マルチ高年齢被保険者であった方が失業した場合

マルチ高年齢被保険者であった方が失業した場合には、一定の要件を満たせば、 高年齢求職者給付金(被保険者であった期間に応じて基本手当日額の30日分または 50日分の一時金)を受給することができるようになります。

③雇用保険マルチジョブホルダー制度に関するQ&A

Q.通常の雇用保険は加入要件を満たすと必ず加入しなければならないのですが、本制度も同様の取扱いでしょうか?
A.通常の雇用保険とは異なり、初めてマルチ高年齢被保険者に加入する場合は、要件を満たすと必ず加入しなければならないわけではなく、マルチ高年齢被保険者として申出をする方の希望により、ハローワークに申出を行った日からマルチ高年齢被保険者となります。このため、要件を満たす者から申出があった場合は、加入が必要となります。
Q.雇用している者からマルチ雇入届の記載依頼がきたが、必ず対応しないといけないのでしょうか?
A.マルチ高年齢被保険者として雇用保険の適用を希望する者が加入要件に該当する場合に、申し出を行いマルチ高年齢被保険者となることは、雇用保険法に定められた本人の権利ですので、必ず対応してください。
なお、マルチ高年齢被保険者として雇用保険の適用を希望する者が申出を行ったことを理由として、解雇や雇止め、労働条件の不利益変更など、不利益な取り扱いを行うことは法律上禁じられていますので、ご留意ください。
Q.雇用が継続しており雇用契約に変更がないにもかかわらず、自社のマルチ高年齢被保険者からマルチ喪失届(離職証明書)の記載依頼がなされたが、どういうことでしょうか。 
A.1つの事業所での雇用が継続しており雇用契約に変更がない場合であっても、他の事業所を離職した場合や他の事業所の週所定労働時間が20時間以上となった場合、マルチ高年齢被保険者ではなくなるため、マルチ喪失届(離職証明書)の提出が必要となります。

【3】実務のポイント

今回の制度は、労働者の申し出を起点として雇用保険を適用させることとなり、適用日以降の賃金に対しては雇用保険料の徴収が必要となります。給与計算や年度更新の手続きにも影響が出ますので注意が必要です。

雇用保険マルチジョブホルダー制度においては、マルチ高年齢被保険者としての雇用保険の適用を希望する本人が手続きを行う必要があります。

マルチ高年齢被保険者の資格取得日は、マルチ高年齢被保険者として申出をする方が本人の住所又は居所を管轄するハローワークに申出した日となり、遡及加入できないため、記載依頼を受けたら、速やかに事業主記載事項を記入いただき、確認資料と併せて本人に交付してください。

参考URL

具体的な記載事項等については「雇用保険マルチジョブホルダー制度の申請パンフレット」を参考にしてください。
『雇用保険マルチジョブホルダー制度の申請パンフレット』(厚生労働省)

また今回紹介したQ&Aの詳細は厚生労働省のHPをご覧ください。
『Q&A~雇用保険マルチジョブホルダー制度~』(厚生労働省)

関㟢 悠平

この記事を書いた人

関㟢 悠平

平成29年入社 早稲田大学卒 大学卒業後は、ブライダル関連の上場企業でサービス業に従事。その後、エスティワークスに参画し社会保険労務士の資格を取得。丁寧な業務遂行と持ち前のトーク力で多くのお客様の信頼を得ている。