労働法改正に関するコラム

社会保険加入対象の拡大(令和7年6月13日に改正年金法が成立)

公開日:2025.11.28

更新日:2025.11.29

社会保険加入対象の拡大(令和7年6月13日に改正年金法が成立)

令和7年6月13日に改正年金法が成立いたしました。今回は改正法のうち、社会保険(厚生年金・健康保険)の加入対象の拡大の概要についてご紹介いたします。

今回の加入拡大のポイントは、以下の3つです。

  1. 短時間労働者の企業規模要件を縮小撤廃 
  2. 短時間労働者の賃金要件を撤廃 
  3. 個人事業所の適用対象を拡大

これらのうち、中小企業の労務担当者が特に確認しておく必要があるものが「短時間労働者に関する要件撤廃」です。それぞれについて詳しくご説明します。

エスティワークスが培ってきた労働法令のノウハウと最新の研究成果をぜひご活用いただければ幸いです。ご相談レベルで構いませんので、まずはお気軽にお問合せください↓

短時間労働者の企業規模要件を縮小・撤廃

社会保険に加入する短時間労働者は、現時点で下記の要件を全て満たす必要があります。

従業員51人以上の企業等で働く者のうち

①週の所定労働時間が20時間以上である

②給与が月額88,000円以上である

③2ヶ月を超えて働く予定がある

④昼間学生ではない

今回の改正により、企業規模要件を順次、縮小・撤廃し、次に紹介する賃金要件の撤廃もあわせて、短時間労働者が週20時間以上働けば、働く企業の規模にかかわらず、社会保険に加入するようになります。

企業規模要件については下記の通り、10年かけて段階的に縮小・撤廃されることとなります。

企業規模(従業員=社会保険の被保険者数)

企業規模要件適用時期

従業員36人以上

2027年10月適用

従業員21人以上

2029年10月適用
従業員11人以上2032年10月適用
従業員10人以下2035年10月適用

短時間労働者の賃金要件を撤廃

前項でご紹介したように、現在の短時間労働者の社会保険加入要件の1つに

・給与月額88,000円以上である

という要件があります。

いわゆる「年収106万の壁(給与月額88,000円)として意識されていた要件となりますが、この賃金要件が撤廃されます。

撤廃の時期は法律の公布から3年以内とされています。

ただ、もともとこの「3年」というのは、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断することとされていました。(最低賃金1,016円以上の地域で週20時間以上働くと、年額換算で約106万円となります)

この点、令和7年度の最低賃金改定に伴い、2025年12月1日には全国の最低賃金額1,016円以上となるため、3年を待たずに撤廃されることになると予想されます。

ちなみに最低賃金は、都道府県によって発効日が異なります。

今後は、それぞれの都道府県での最低賃金の発効日に応じて「事実上、賃金要件が撤廃されていく」ことになります。

個人事業所の適用対象を拡大

現在、個人事業所のうち、常時5人以上の者を使用する法定17業種(※)の事業所は、社会保険に必ず加入することとされています(法人は常時1人以上の従業員を使用していれば業種に関わらず強制加入となります)。

今回の改正では、2029年10月より、法定17業種に限らず、常時5人以上の者を使用する全業種の事業所を適用対象とするよう拡大します。

ただし、2029年10月の施行時点で既に存在している事業所は当分の間、対象外です。

常時5人以上の者を使用する個人事業所

法定で定める以下17業種は適用対象(現行通り)

①物の製造、②土木・建設、③鉱物採掘、④電気、⑤運送、⑥貨物積卸、⑦焼却・清掃、⑧物の販売、⑨金融・保険、⑩保管・賃貸、⑪媒介周旋、⑫集金、⑬教育・研究、⑭医療、⑮通信・報道、⑯社会福祉、⑰弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業

上記以外の業種→今回の法改正で適用対象に。(但し、ただし、2029年10月の施行時点で既に存在している事業所は当分の間、対象外)

5人未満の個人事業所(全業種)

適用対象外(現行通り)

実務のポイント

前述したとおり、今後は、都道府県での最低賃金の発効日に応じて「事実上、賃金要件が撤廃されていく」ことになります。

まずは、これまで最低賃金額が1,016円未満の地域で勤務していた短時間労働者について、最低賃金額が改定になったことで社会保険の加入資格を満たすこととなっていないか、確認する必要があります。

例)秋田県(最低賃金951円⇒1,031円に改定) 

改定前の月額:時給951円×週20時間×4.3週=月額81,786円 

改定後の月額:時給1.031円×週20時間×4.3週=月額88,666円>88,000円

上記のようなケースで最低賃金の改定により新たに社会保険の加入義務が発生している可能性がありますので、対象者がいる場合には確認を行いましょう。

また、企業要件の撤廃については10年かけて段階的に行われることから、自社の従業員数(社会保険被保険者数)を注視し、いつから対象となるのか、把握しておくことが重要です。

参考URL 

厚生労働省『社会保険の加入対象の拡大について』

エスティワークスが培ってきた労働法令のノウハウと最新の研究成果をぜひご活用いただければ幸いです。ご相談レベルで構いませんので、まずはお気軽にお問合せください↓

関㟢 悠平

この記事を書いた人

関㟢 悠平

平成29年入社 早稲田大学卒 大学卒業後は、ブライダル関連の上場企業でサービス業に従事。その後、エスティワークスに参画。丁寧な業務遂行と持ち前のトーク力で多くのお客様の信頼を得ている。IPO(上場)審査に向けた労務デューデリジェンス (労務DD)を数多く実施、給与計算や社会保険実務にも精通した社労士として活躍中。