労働法改正に関するコラム

求職活動等におけるセクシュアルハラスメント対策の義務化(令和8年10月1日施行)

公開日:2026.07.16

更新日:2026.07.16

求職活動等におけるセクシュアルハラスメント対策の義務化(令和8年10月1日施行)

令和7(2025年)年6月に成立した改正男女雇用機会均等法により、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの防止措置が事業主の義務となります(令和8年10月1日施行)。企業規模を問わずすべての事業主が対象(従業員1人でも対象)です。

これにより、これまで対策の「死角」となりがちだった求職活動等の現場において、事業主に法的な防止措置が義務付けられることになります。採用担当者、労務担当者はしっかり確認しておきましょう。

求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの定義

求職活動等におけるセクシュアルハラスメントとは、下記のように定義されます。

事業主が雇用する労働者による性的な言動により、求職者等の求職活動等が阻害されるもの

なお、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれます。被害を受けた者の性的指向又はジェンダーアイデンティティも問われません。

「労働者」とは

「労働者」とは、正社員のみならず、パートタイム労働者、契約社員等いわゆる非正規雇用労働者を含む事業主が雇用する労働者の全てをいいます。

尚、派遣社員(派遣で受け入れている社員)については派遣元・派遣先それぞれで労働者として扱うこととなります。

「性的な言動」とは

「性的な言動」とは、性的な内容の発言及び性的な行動を指します。

<性的な内容の発言>

  • 性的な事実関係を尋ねること
  • 性的な内容の情報を意図的に流布すること 等

<性的な行動>

  • 性的な関係を強要すること
  • 必要なく身体に触ること
  • わいせつな図画を配布すること 等

「求職活動等」とは

「求職活動等」とは、求職者が行う求職活動や求職者に類する者が行う職業の選択に資する活動を指します。

<求職活動等の例>

  • 企業の採用面接への参加
  • 企業の就職説明会への参加
  • 企業の雇用する労働者への訪問
  • インターンシップへの参加
  • 教育実習、看護実習等の実習の受講

なお、いわゆる職場(事業主が雇用する労働者が通常就業している場所)で行われるものに限られず、また、SNS等のオンラインを介したものやオンライン上で行われるものも対象となります。

「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」の典型例

「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」の典型的な例として次のようなものがあります。

  • 少人数の説明会において、労働者が求職者等の腰、胸等に触ったため、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること。
  • 企業が実施するインターンシップにおいて、労働者が求職者等に対して性的な冗談やからかいを意図的かつ継続的に行ったため、当該求職者等が苦痛に感じてインターンシップ中の活動が手につかないこと。
  • 企業が実施するインターンシップにおいて、性的な内容を含むスターの掲示や画面の表示等を行っているため、求職者等が苦痛に感じてインターンシップ中の活動が手につかないこと。
  • 面接中、面接官を務める労働者から性的な事実に関する質問を受け、求職者が苦痛に感じてその求職活動の意欲が低下していること。
  • 求職者等が労働者への訪問を行った際、当該労働者に性的な関係を求められ、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること。
  • インターンシップ中に労働者が求職者等を執拗に私的な食事に誘い、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること。

事業主が講ずべき措置

求職活動等におけるセクシュアルハラスメント防止のために、事業主が講ずべき措置等は下記の通りです。

求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止のために講ずべき措置(義務)

Ⅰ 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

Ⅱ 相談体制の整備

Ⅲ 事後の迅速かつ適切な対応

Ⅳ そのほか併せて講ずべき措置

Ⅰ 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

①求職者等に対するセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発する

<具体例>

  • 社内報、パンフレット、社内ホームページ等に記載し、配布等すること。
  • 研修、講習等を実施すること。

②求職者等に対するセクシュアルハラスメントを行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を、労働者に周知・啓発する

<具体例>

  • 就業規則で求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること。

③求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化し、労働者及び求職者等に周知・啓発する

<具体例>

  • 労働者に対しては、面談時間及び場所の指定、実施体制並びにやり取りに用いるSNSの種類の指定その他の求職者等と面談等を行う際の規則を定め、周知・啓発するための研修、講習等を実施すること。
  • 求職者等に対しては、上記規則を踏まえ、面談等に関する留意事項をホームページやパンフレット等の広報手段を用いて周知等すること。

Ⅱ 相談体制の整備

①相談窓口をあらかじめ定め、求職者等に周知する

<具体例>

  • 相談に対応する担当者をあらかじめ定めたり、外部の機関に相談への対応を委託するなどしたうえで、当該相談窓口を求職者等に対し、パンフレット、ホームページ等によって周知すること。

②相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにする

<具体例>

  • 相談の内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること。
  • あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。
  • 担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと。

Ⅲ 事後の迅速かつ適切な対応

①事実関係を迅速かつ正確に確認すること

<具体例>

  • 相談者及び行為者とされる者の双方から事実関係を確認すること。その際、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも適切に配慮すること。また、相談者と行為者との間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずること。

②求職活動等におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと

<具体例>

  • 事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者を引き離すための対応、行為者の謝罪、又は人事担当者による被害者への相談対応等の措置を講ずること。

③求職活動等におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置を適正に行うこと

<具体例>

  • 就業規則に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること。あわせて、事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者を引き離すための対応、行為者の謝罪等の措置を講ずること。

④再発防止に向けた措置を講ずること

<具体例>

  • 労働者に対して求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施すること。

Ⅳ そのほか併せて講ずべき措置

①相談者・行為者等の情報はプライバシーに属するものであることから、プライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者及び求職者等に対して周知すること

<具体例>

  • プライバシーの保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、当該マニュアルに基づき対応するものとすること
  • プライバシーの保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行うこと。

②労働者が事実関係の確認等に協力したことや、紛争解決の援助の求め労働局に対して相談したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

<具体例>

  • 就業規則等において、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに関する事実関係の確認等を理由として、当該労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知・啓発をすること。

その他の望ましい取り組み

①教育機関等との連携

  • 求職活動等を行う大学生や専門学校生が所属する教育機関が設置する相談窓口の担当者等の求職者等の関係者から求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに係る相談に関する情報提供があった場合には、連携し、適切な対応を行うことが望ましい。

②雇用する労働者以外が行為者とされる相談の対応

  • 事業主は、求職者等から、顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者による求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに類すると考えられる相談があった場合には、その内容を踏まえて、必要に応じて適切な対応を行うように努めることが望ましい。

③求職活動等における他ハラスメントに類する行為

  • 求職活動等におけるパワーハラスメントに類する行為、求職活動等における妊娠、出産等に関するハラスメントに類する行為及び求職活動等における育児休業等に関するハラスメントに類する行為について、事業主は、当該事業主が雇用する労働者の求職者等に対する言動についても必要な注意を払うよう配慮するとともに、事業主自らと労働者も、求職者等に対する言動について必要な注意を払うよう努めることが望ましい。

実務のポイント

令和8年10月1日の施行に向けて、自社のハラスメント規程や、ハラスメント対応の方針を示した資料に求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策を盛り込みアップデートする必要があります。

また、採用活動の中で求職者等に対するハラスメントが起きないよう、必要に応じて採用活動フローの見直しや、ルールの設定・周知を行うとよいでしょう

人事労務担当者やるべきことのまとめ

  1. 就業規則へ禁止規定・懲戒規定・不利益取扱い禁止を追記
  2. ハラスメントマニュアルの見直し
  3. 求職者向け相談窓口の設置と面接官等への周知
  4. 面談場所・時間・SNS使用等のルール明文化
  5. 採用担当者向け研修の実施など

参考URL

令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!

厚生労働省『職場におけるハラスメントの防止のために』


関㟢 悠平

この記事を書いた人

関㟢 悠平

平成29年入社 早稲田大学卒 大学卒業後は、ブライダル関連の上場企業でサービス業に従事。その後、エスティワークスに参画。丁寧な業務遂行と持ち前のトーク力で多くのお客様の信頼を得ている。IPO(上場)審査に向けた労務デューデリジェンス (労務DD)を数多く実施、給与計算や社会保険実務にも精通した社労士として活躍中。