労働法改正に関するコラム
労働法改正に関するコラム
令和7年6月11日に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」が公布されました。本改正により、カスタマーハラスメントの防止措置がすべての事業主の義務となります(令和8年10月1日施行)。
本記事では、法改正に伴い義務化される「雇用管理上講ずべき措置」の具体策や、実務における「カスハラ」の定義、企業の対応マニュアル策定のポイントまで分かりやすく解説します。
職場におけるカスタマーハラスメントとは、下記のように定義されます。
職場において行われる |
なお、顧客等からの苦情の全てが職場におけるカスタマーハラスメントに該当するわけではなく、客観的にみて、社会通念上許容される範囲で行われたものは、いわば正当な申入れであり、職場におけるカスタマーハラスメントには当たりません。
「職場」とは、労働者が業務を遂行する場所を指します。また、労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、労働者が業務を遂行する場所については、「職場」に含まれます。
例えば、取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店、顧客の自宅等であっても、労働者が業務を遂行する場所であれば「職場」に該当します。尚、電話やSNS等のインターネット上において行われるものも含まれます。
「顧客等」とは、顧客(今後商品の購入やサービスの利用等をする可能性がある潜在的な顧客も含む)、取引の相手方(今後取引する可能性のある者も含む)、施設の利用者(駅、空港、病院、学校、福祉施設、公共施設等の施設を利用する者をいい、今後利用する可能性のある者も含む)その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者を指し、例えば、以下の者等が含まれます。
「労働者」とは、正社員のみならず、パートタイム労働者、契約社員等いわゆる非正規雇用労働者を含む事業主が雇用する労働者の全てをいいます。
尚、派遣社員(派遣で受け入れている社員)については派遣元・派遣先それぞれで労働者として扱うこととなります。
「社会通念上許容される範囲」を超えた言動とは、社会通念に照らし、当該顧客等の言動の内容が契約内容からして相当性を欠くもの、又は手段や態様が相当でないものを指します。
この判断に当たっては、下記のような様々な要素を総合的に考慮することとなります。
社会通念上許容される範囲を超えた言動の典型的な例として、下記のようなものがあります。
【言動の内容が社会通念上許容される範囲を超えるもの】 |
|---|
①そもそも要求に理由がない又は商品・サービス等と全く関係のない要求 |
【手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるもの】 |
|---|
①身体的な攻撃(暴行、傷害等) |
「労働者の就業環境が害される」とは、当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。
この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかが基準となります。
なお、判断にあたり、当該言動の頻度や継続性は考慮するものの、強い身体的又は精神的苦痛を与える態様の言動の場合は、1回の言動でも、「就業環境を害される」と判断される場合があり得えます。
カスタマーハラスメントの防止のために、事業主が講ずべき措置等は、下記の通りです。
事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関し雇用管理上講ずべき措置(義務) | Ⅰ方針等の明確化及びその周知・啓発 |
Ⅱ相談・適切な対応に必要な体制の整備 | |
Ⅲ事後の迅速かつ適切な対応 | |
Ⅳ対応の実効性を確保するために必要な抑止措置 | |
Ⅴ上記措置と併せて講ずべき措置 | |
他の事業主の講ずる雇用管理上の措置の実施に関する協力 | |
事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関し行うことが望ましい取組 | |
事業主が職場において行われる自らの雇用する労働者以外の者に対する顧客等の言動に関し行うことが望ましい取組 | |
①カスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること
<具体例>
②カスタマーハラスメントの内容及びあらかじめ定めた対処の内容を、管理監督者を含む労働者に周知すること
<具体例>
① 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
<具体例>
② 相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。尚、ハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合、ハラスメントに該当するか否か微妙な場合も広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。
<具体例>
① 事実関係を迅速かつ正確に確認すること。なお、行為者が、他の事業主が雇用する労働者等である場合には、必要に応じて、他の事業主に事実関係の確認への協力を求めることも含まれる。
<具体例>
② カスタマーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと。
<具体例>
③ 改めて職場におけるカスタマーハラスメントに関する方針を周知・啓発し、必要な場合には、再発防止に向けた措置を講ずること。
<具体例>
労働者に対し過度な要求を繰り返すなど特に悪質と考えられるものへの対処の方針をあらかじめ定め、管理監督者を含む労働者に周知するとともに、当該方針において定めた対処を行うことができる体制を整備する。
<具体例>
① 相談者等の情報は当該相談者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又は当該カスタマーハラスメントに係る事後の対応に当たっては、相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること。
<具体例>
② 相談をしたこと若しくは事実関係の確認等の措置に協力したこと、都道府県労働局に対して相談、紛争解決の援助の求め若しくは調停の申請を行ったこと又は調停の出頭の求めに応じたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
<具体例>
① 他の事業主の講ずる雇用管理上の措置の実施に関する協力
② 事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関し行うことが望ましい取組
労働者が自社の商品やサービスをよく理解し、顧客等への対応力の向上を図るために研修等の必要な取組を行うこと。
<具体例>
労働者が顧客等への理解を深めるために必要な取組を行うこと。
<具体例>
③ 事業主が職場において行われる自らの雇用する労働者以外の者に対する顧客等の言動に関し行うことが望ましい取組
「カスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。」という講ずべき措置のうち「Ⅰ方針等の明確化及びその周知・啓発」の①に該当する内容について、当該事業主が雇用する労働者以外の者(他の事業主が雇用する労働者及び個人事業主等の労働者以外の者)に対する顧客等の言動についても、同様の方針を併せて示すことが望ましい。
また、これらの者から職場におけるカスタマーハラスメントに類すると考えられる相談があった場合には、その内容を踏まえて、必要に応じて適切な対応を行うように努めることが望ましい。
令和8年10月1日の施行に向けて、自社のハラスメント規程や、ハラスメント対応の方針を示した資料にカスタマーハラスメント対策を盛り込みアップデートする必要があります。
まずは自社でのカスタマーハラスメントの過去例や実態を参考にしながら、カスタマーハラスメント対策マニュアルの策定に取り組んでみましょう。

この記事を書いた人
平成29年入社 早稲田大学卒 大学卒業後は、ブライダル関連の上場企業でサービス業に従事。その後、エスティワークスに参画。丁寧な業務遂行と持ち前のトーク力で多くのお客様の信頼を得ている。IPO(上場)審査に向けた労務デューデリジェンス (労務DD)を数多く実施、給与計算や社会保険実務にも精通した社労士として活躍中。
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