DRAG

労働法改正情報

中小企業の割増賃金率の引き上げ~労働基準法~(令和5年4月1日施行)

2023.01.31

中小企業の割増賃金率の引き上げ~労働基準法~(令和5年4月1日施行)

【1】概要

大企業においては平成22年4月から適用されていた月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の引き上げが、令和5年4月1日から、中小企業にも適用されることとなります。

【2】改正のポイント

改正となる割増賃金率

1か月の法定外時間外労働時間(1日8時間・週40時間を超える時間)で、月60時間を超える部分に対しては、使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

月60時間を超える法定時間外労働に対する割増賃金率
大企業50%
中小企業【今回の改正点】
令和5年3月31日まで 25%

令和5年4月1日から 50%
月60時間を以内の法定時間外労働に対する割増賃金率
大企業25%
中小企業25%

深夜・休日労働の取扱い

深夜労働との関係

月60時間を超える時間外労働を深夜(22:00~5:00)の時間帯に行わせる場合、深夜割増賃金率25%+時間外割増賃金率50%=75%となります。

休日労働との関係

月60時間の時間外労働時間の算定には、法定休日(例えば日曜日)に行った労働は含まれませんが、それ以外の休日(例えば土曜日)に行った法定時間外労働は含まれます。
なお、労働条件を明示する観点や割増賃金の計算を簡便にする観点から、法定休日とそれ以外の休日は、明確に分けておくことが望ましいです。

【3】代替休暇について

代替休暇とは

月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の方の健康を確保するため、引き上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇(=「代替休暇」)を付与することができます。

導入には労使協定の締結が必要

代替休暇制度導入にあたっては、過半数労働組合、それがない場合は過半数労働者代表との間で、下記の事項を定めた労使協定の締結が必要です。

なお、この労使協定は事業場において代替休暇の制度を設けることを可能にするものであり、個々の労働者に対して代替休暇の取得を義務づけるものではありません。個々の労働者が実際に代替休暇を取得するか否かは、労働者の意思により決定されます。

労使協定で定める事項

1.代替休暇の時間数の具体的な算定方法
2.代替休暇の単位
3.代替休暇を与えることができる期間
4.代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日

代替休暇の時間数の算定方法

月60時間を超えた法定時間外労働部分の代替休暇の時間数は、下記の計算式により算定します。

代替休暇の時間数の算定式
代替休暇の時間数=(「1か月の法定時間外労働時間数」-60)×「換算率」
換算率=「代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている割増賃金」-「代替休暇を取得した場合に支払うこととされている割増賃金率」

【例】1か月の法定時間外労働時間数が80時間で、法定時間外労働に対し125%の割増賃金率で支払いをしている場合

1か月の法定時間外労働時間数=80時間
代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている割増賃金=150%
代替休暇を取得した場合に支払うこととされている割増賃金率=125%

(80-60)×(1.50-1.25)=5時間

【4】実務のポイント

就業規則の確認・変更

割増賃金率の引き上げに伴い、就業規則で定めている割増賃金率の変更が必要となる場合があります。

法定時間外労働時間に対し、割増賃金率を一律で125%と定めてる場合には、60時間超える場合は150%となる旨を記載する必要があります。就業規則を確認し、規程の変更・労働基準監督署への届出を行ってください。

給与計算の見直し

令和5年4月1日から給与計算において60時間超過の判定・割増賃金率の変更が必要となる場合があります。給与計算フローをチェックし、施行に向けての対応を進めましょう。

参考URL

「厚生労働省パンフレット」

関㟢 悠平

この記事を書いた人

関㟢 悠平

平成29年入社 早稲田大学卒 大学卒業後は、ブライダル関連の上場企業でサービス業に従事。その後、エスティワークスに参画し社会保険労務士の資格を取得。丁寧な業務遂行と持ち前のトーク力で多くのお客様の信頼を得ている。