給与計算と社会保険のコラム

健康保険被扶養者認定の年間収入取り扱いの変更(令和8年4月1日以降)

公開日:2026.05.18

更新日:2026.05.18

健康保険被扶養者認定の年間収入取り扱いの変更(令和8年4月1日以降)

健康保険の被扶養者の認定について、令和8年4月1日からこれまでの通達が見直され、年間収入の取り扱いが変更になりました。これに伴い、厚生労働省と日本年金機構から、「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」及び「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いに係るQ&Aについて」が公表されました。

これにより、これまで扶養に入れなかったパートタイム労働者が、被扶養者として認定される可能性があるため、企業の労務担当者は、しっかりと確認しておきましょう。


被扶養者認定における年間収入要件

健康保険の被扶養者の認定においては、下記のような年間収入要件があります。

健康保険被扶養者 年間収入要件
  • 年間収入が130万円未満(60歳以上である場合等は180万円未満)

かつ

  • 認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合には、被保険者の年間収入の2分の1未満であると認められる場合
  • 認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合には、被保険者からの援助に依る収入額より少ない場合

この年間収入の判定において、これまでは、認定対象者の過去の収入、現時点の収入または将来の収入の見込みなどから、今後1年間の収入の見込みにより判定することとされておりました。

この収入見込みについて、令和8年4月1日より、就業調整対策の観点から、被扶養者認定の予見可能性を高めるため、労働契約段階で見込まれる収入を用いて被扶養者の認定を行うよう変更されました。

年間収入見込みの判定

2026年4月1日以降、収入見込みは、下記の通り算出を行うこととなりました。

労働条件通知書等の労働契約の内容が確認できる書類において規定される時給・労働時間・日数等を用いて算出

上記により算出した年間収入の見込額が130万円未満である場合、被扶養者として取り扱われることとされています。

そのため、労働条件通知書等に明確な規定がなく、予め金額を見込み難い時間外労働に対する賃金等(いわゆる残業代)は年間収入の見込額には含まないこととなります。

たとえ扶養認定時点で時間外労働が発生していた場合でも、当年度においては一時的な変動収入とみなされ、年間収入の判定には影響しないこととなります。

(労働契約内容が確認できる書類がない場合は、従来どおり、勤務先から発行された収入証明書や課税(非課税)証明書等により年間収入を判定することとされています。)

尚、下記の基本的な要件については従前から変わらず適用されます。

  • 認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合には、被保険者の年間収入の2分の1未満であると認められる場合
  • 認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合には、被保険者からの援助に依る収入額より少ない場合

また、給与収入以外に他の収入(年金収入や事業収入等)がある場合における年間収入の取扱いについては、従前の取扱いから変更はありません。

扶養追加手続き時の対応

日本年金機構(協会けんぽ)では、本取り扱いにあたり、「被扶養者(異動)届」に以下の(1)(2)の両方の添付が必要となりました。

(1)労働契約内容がわかる書類
労働条件通知書、雇用契約書または労働条件が記載されている事業主証明(任意様式)

(2)扶養認定を受ける方からの「給与収入のみである」旨の申立書(申立書には扶養認定を受ける方の氏名を記載すること)

(2)については、被扶養者(異動)届の扶養に関する申立書欄に、扶養認定を受ける方からの「給与収入のみである」旨の申立てと扶養認定を受ける方の氏名を記載した場合は添付は不要です。

また、所得税法の規定による控除対象配偶者または扶養親族となっている者(給与収入のみの場合は年収123万円以下)については、事業主の証明があれば添付書類は不要です。

本取り扱いがされない場合(留意事項)

日本年金機構(協会けんぽ)では、以下のように年間収入の判定ができない場合、本取り扱いでの認定はできないとしておりますのでご留意ください。

ア.被扶養者(異動)届の「被扶養者になった日」から起算して通知書等上の契約期間が1年未満の場合
イ.「シフト制による」といった労働時間の記載が不明確な場合
ウ.「通勤手当有」等となっており、手当の金額が不明確な場合

労働条件変更時の対応

労働契約の更新が行われた場合や労働条件に変更があった場合には、当該内容に基づき被扶養者に係る確認を実施することとし、条件変更の都度、当該内容が分かる書面等の提出を求めることとされました。

保険者(健康保険組合・協会けんぽ等)から定期的に被扶養者認定の確認を求められることがありますが、認定日以降に労働条件の変更がないか、あった場合には、条件変更の内容を確認し、引き続き扶養範囲内であるかの確認を行う必要があります。

実務のポイント

これまで残業代により年間収入の要件に該当していなかった者が、今回の改正により被扶養者として認定される可能性があります。今回の改正内容を従業員に周知した上で、必要に応じて扶養追加の手続きを行うようにしましょう。

扶養追加の認定の際は労働契約の内容を確認することとなっているため、令和8年4月1日以降が扶養認定日となる場合には、前述した日本年金機構(協会けんぽ)のように、添付書類の取り扱いが異なる可能性があります。保険者によって対応が異なりますので、確認の上対応を行いましょう。


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参考URL

厚生労働省『労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて』

日本年金機構『労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて』

関㟢 悠平

この記事を書いた人

関㟢 悠平

平成29年入社 早稲田大学卒 大学卒業後は、ブライダル関連の上場企業でサービス業に従事。その後、エスティワークスに参画。丁寧な業務遂行と持ち前のトーク力で多くのお客様の信頼を得ている。IPO(上場)審査に向けた労務デューデリジェンス (労務DD)を数多く実施、給与計算や社会保険実務にも精通した社労士として活躍中。