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労働法改正情報

脳・心臓疾患の労災認定基準改正(令和3年9月15日施行)

2022.02.23

脳・心臓疾患の労災認定基準改正(令和3年9月15日施行)

【1】概要

  • 厚生労働省は、『脳・心臓疾患の労災認定基準』について、働き方の多様化や職場環境の変化が生じていることから、最新の医学的知見を踏まえて約20年ぶりに改正を行いました。
  • 今回は、この認定基準の改正のポイントをご紹介します。 

【2】 改正のポイント

①長期間の過重業務の評価に当たり、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確化

改正前
発症前1か月におおむね100時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合について業務と発症との関係が強いと評価できることを示していました。
改正後
上記の時間に至らなかった場合も、これに近い時間外労働を行った場合には「労働時間以外の負荷要因」の状況も十分に考慮し、業務と発症との関係が強いと評価できることを明確にしました。

②長期間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因を見直し

下記負担要因が新たに追加
・休日のない連続勤務、勤務間インターバルが短い勤務
・その他事業場外における移動を伴う業務
・心理的負荷を伴う業務
・身体的負荷を伴う業務

③「短期間の過重業務」、「異常な出来事」と、発症との関連性が強いと判断できる場合を明確化

業務と発症との関連性が強いと判断できる場合として、「短期間の加重業務」「異常な出来事」に分け、以下の例がを示されました。

短期間の過重業務
・発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められる場合
・発症前おおむね1週間継続して、深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど 過度の長時間労働が認められる場合
異常な出来事 
・ 業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与した場合
・ 事故の発生に伴って著しい身体的、精神的負荷のかかる救助活動や事故処理に携わった場合
・ 生命の危険を感じさせるような事故や対人トラブルを体験した場合
・ 著しい身体的負荷を伴う消火作業、人力での除雪作業、身体訓練、走行等を行った場合
・ 著しく暑熱な作業環境下で水分補給が阻害される状態や著しく寒冷な作業環境下での作業、温度差のある場所への頻回な出入りを行った場合

④対象疾病に「重篤な心不全」を新たに追加

改正前
不整脈が一義的な原因となった心不全症状等は、対象疾病の「心停止(心臓性突然死を含む)」に含めて取り扱っていました。
改正後
心不全は心停止とは異なる病態のため、新たな対象疾病として「重篤な心不全」を追加しました。「重篤な心不全」には、不整脈によるものも含まれます。

【3】詳細について

厚生労働省のHPに今回の改正に関するリーフレットが公表されています。詳しくはこちらもご参照ください。
『脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント』(厚生労働省)

関㟢 悠平

この記事を書いた人

関㟢 悠平

平成29年入社 早稲田大学卒 大学卒業後は、ブライダル関連の上場企業でサービス業に従事。その後、エスティワークスに参画し社会保険労務士の資格を取得。丁寧な業務遂行と持ち前のトーク力で多くのお客様の信頼を得ている。