労働法改正情報

社会保険上の報酬の取り扱いについて~事務連絡~(令和5年6月12日及び6月27日)

2023.07.12

社会保険上の報酬の取り扱いについて~事務連絡~(令和5年6月12日及び6月27日)

【1】概要

日本年金機構・厚生労働省から新着の通知として、下記の2点が公表されました。

①   「「健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱いについて」の一部改正について」にかかる留意点について(令和5年6月12日)

②   「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の一部改正について(令和5年6月27日)

どちらも社会保険上の報酬に関する事項になりますが、その内容をご紹介いたします。

【2】年4回以上の賞与の取り扱いについて

毎月の給与は原則「報酬」として、標準報酬月額をもとに社会保険料が徴収されます。賞与は「賞与」として社会保険料を徴収することになりますが、毎年7月1日~1年間の間に賞与が4回以上支給される場合は「賞与に係る報酬」として取り扱われます。
今回の通知にて、賞与に係る諸規定を新設した場合の取り扱いが明確化されました。
以下、通知の内容の抜粋になります。

賞与に係る諸規定を新設した場合、仮に年間を通じ4回以上の支給が客観的に定められている場合であっても、次期標準報酬月額の定時決定(7月、8月又は9月の随時改定を含む。)による標準報酬月額が適用されるまでの間は、賞与に係る報酬額を算定することが困難であることから、「賞与」として取り扱い、賞与支払届を提出させること。

なお、次期標準報酬月額の定時決定(7月、8月又は9月の随時改定を含む。)による標準報酬月額が適用される際には、諸規定や支給実績を元に「賞与に係る報酬」又は「賞与」を判断し、「賞与に係る報酬額」については、支給実績から、諸規定による諸手当等の支給回数等の支給条件であったとすれば7月1日前1年間に受けたであろう賞与の額を算定し、その額を12で除して得た額となる。

賞与に係る諸規定を新設した1年目については、たとえ年4回以上の支給があることが確定している場合でも「賞与に係る報酬」ではなく「賞与」として取り扱うこととなり、賞与支払届の提出が必要となることに注意が必要です。

【3】永年勤続表彰金について

事業主が長期勤続者に対して支給する金銭、金券又は記念品等(いわゆる「永年勤続表彰金」)は、社会保険上の「報酬等」に含まれるか、ということについて判断要件が公表されました。
以下、事例集の内容の抜粋となります。

永年勤続表彰金については、企業により様々な形態で支給されるため、その取扱いについては、名称等で判断するのではなく、その内容に基づき判断を行う必要があるが、少なくとも以下の要件を全て満たすような支給形態であれば、恩恵的に支給されるものとして、原則として「報酬等」に該当しない。
ただし、当該要件を一つでも満たさないことをもって、直ちに「報酬等」と判断するのではなく、当該永年勤続表彰金の性質について十分確認した上で、総合的に判断すること。

≪永年勤続表彰金における判断要件≫
①表彰の目的
企業の福利厚生施策又は長期勤続の奨励策として実施するもの。なお、支給に併せてリフレッシュ休暇が付与されるような場合は、より福利厚生としての側面が強いと判断される。

②表彰の基準
勤続年数のみを要件として一律に支給されるもの。

③支給の形態
社会通念上いわゆるお祝い金の範囲を超えていないものであって、表彰の間隔が概ね5年以上のもの。

上記判断要件を考慮したうえで、自社の永年勤続表彰金が、報酬に該当するか該当しないのか、確認を行う必要があります。

【4】実務のポイント

7月の定時決定や毎月の随時改定の手続きにおいて、自社の給与項目のどれが社会保険上の「報酬」にあたり、またどれが「賞与に係る報酬」となるか、精査して手続きを行わないと、従業員の社会保険料に誤りが生じる結果となりかねません。今回の通知の内容や事例集を参考にしながら、適正な手続きを行う必要があります。

参考URL

「「健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱いについて」 の一部改正について」にかかる留意点について

「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに 関する事例集」の一部改正について



関㟢 悠平

この記事を書いた人

関㟢 悠平

平成29年入社 早稲田大学卒 大学卒業後は、ブライダル関連の上場企業でサービス業に従事。その後、エスティワークスに参画し社会保険労務士の資格を取得。丁寧な業務遂行と持ち前のトーク力で多くのお客様の信頼を得ている。