労働法改正情報

テレワークガイドラインの改定(令和3年3月25日改定)

2022.02.21

テレワークガイドラインの改定(令和3年3月25日改定)

【1】概要

  • 令和3年3月25日、厚生労働省より「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」の改定版が公表されました。
  • コロナ禍での緊急事態宣言を契機にテレワークを導入した企業の割合は63.9%と公表されており、ウィズコロナにおける感染症拡大防止や外出自粛要請への対応のためのテレワークから、新たな目的や狙いを見据え、テレワークへ移行している企業も多くみられます。
  • 今回は改定されたテレワークガイドラインから、労働時間管理におけるテレワークに特有の事象の取扱いについてご紹介いたします。

【2】改定のポイント~テレワークに特有の事象の取扱い

①中抜け時間

中抜け時間については、労働基準法上、使用者は把握することとしても、把握せずに始業および終業の時刻のみを把握することとしても、いずれでも構いません。

中抜け時間を把握する場合、使用者が把握する場合、その方法として、例えば一日の終業時に、労働者から報告させることが考えられます。

中抜け時間の取扱いの例
1.把握する場合には休憩時間として取り扱い、終業時刻を繰り下げたり、時間単位の年次有給休暇として取り扱う
2.把握しない場合には、始業及び終業の時刻の間の時間について、休憩時間を除き労働時間として取り扱う

②勤務時間の一部についてテレワークを行う際の移動時間

勤務時間の一部でテレワークを行う場合が考えられますが、こうした場合の就業場所間の移動時間は、労働者による自由利用が保障されている時間については休憩時間として取り扱うことが考えらます。

テレワーク中の労働者に対して、使用者が具体的な業務のために急きょオフィスへの出勤を求めた場合など、使用者が労働者に対し業務に従事するために必要な就業場所間の移動を命じ、その間の自由利用が保障されていない場合の移動時間は、労働時間に該当します。

③休憩時間の取り扱い

テレワークを行う労働者について、労使協定により、休憩時間の一斉付与の原則を適用除外とすることができます。

④時間外・休日労働の労働時間管理

テレワークの場合も、使用者は時間外・休日労働をさせる場合には、三六協定の締結、届出や割増賃金の支払が必要となり、また、深夜に労働させる場合には、深夜労働に係る割増賃金の払いが必要です。

⑤長時間労働対策

長時間労働等を防ぐ手法としては、次のような手法が紹介されています。

長時間労働等を防ぐ手法
・メール送付の抑制等やシステムへのアクセス制限等
・時間外、休日、所定外深夜労働についての手続き
→ 労使の合意により、時間外等の労働が可能な時間帯や時間数をあらかじめ使用者が設定する等
・長時間労働等を行う労働者への注意喚起 

【3】実務のポイント~ルールの策定と周知

労働基準法上の労働者には、テレワークを行う場合でも、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令が適用されます。

また労働契約や就業規則において定められている勤務場所や業務遂行方法の範囲を超えて使用者が労働者にテレワークを行わせる場合には、労働者本人の合意を得た上での労働契約の変更が必要です。

そのため、テレワークを円滑かつ適切に、制度として導入し実施するに当たっては、導入目的、対象業務、申請等の手続、費用負担等について、あらかじめ労使で十分に協議して、策定したテレワークのルールを就業規則に定め、労働者に適切に周知することが重要となってきます。

参考URL

厚生労働省のHPでは公開紹介したガイドラインの他、テレワーク導入に向けてのチェックリスト、労働者向けのリーフレットなどが公開されておりますので、こちらもご参照ください。
『テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン』(厚生労働省) 

関㟢 悠平

この記事を書いた人

関㟢 悠平

平成29年入社 早稲田大学卒 大学卒業後は、ブライダル関連の上場企業でサービス業に従事。その後、エスティワークスに参画し社会保険労務士の資格を取得。丁寧な業務遂行と持ち前のトーク力で多くのお客様の信頼を得ている。