労働法改正情報
【1】概要
令和7年4月1日より、育児休業給付金の延長申請を目的とした、いわゆる「保育園の落選狙い」などに対する対策が強化されることになりました。
現行の育児休業給付金については、原則として子が1歳に達する日までの休業について支給することとされていますが、子が1歳に達した日後の期間については、休業することが雇用の継続のために特に必要と認められる場合に、1歳6か月又は2歳に達する日まで、育児休業給付金の支給が行われています。
この「特に必要と認められる場合」とは、以下のように雇用保険施行規則に定められています。
休業することが雇用の継続のために特に必要と認められる場合 |
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育児休業の申出に係る子について、保育所等における保育の利用を希望し、申込みを行っているが、当該子が1歳に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合 |
この取り扱いに関して、かねてより、市区町村側から
「保育所に入所する意思がないにもかかわらず、育児休業給付の延長目的で自治体に入所を申し込む方がいる」
「意に反して保育所等への入所が内定となった方の苦情に時間を要している」
と、自治体に負担がかかっていることについて指摘されていました。
このため、厚生労働省は、育児休業給付金の支給期間延長要件及び手続きについて見直しを行うとともに、ハローワークにおいて、育児休業取得者が速やかな職場復帰を図るために保育所等における保育の利用を希望していることを確認することを明確にするため、雇用保険施行規則の改正を行うこととなりました。
【2】改正内容
現行の育児休業給付金延長申請の要件である「育児休業の申出に係る子について、保育所等における保育の利用を希望し、申込みを行っているが、当該子が1歳に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合」について、
改正後は「速やかな職場復帰を図るために保育所等における保育の利用を希望しているものであると公共職業安定所長が認める場合に限る」と定められることとなりました。
具体的な手続きは次の通り予定されております。
【3】手続きにおける変更点
現行の制度では、「保育所に入所できない場合」の確認手段として、市区町村が発行する「保育所入所保留通知書」を、延長手続きを行う際に添付することとなっています。
見直し後は、市区町村の入所保留通知書に加えて、下記書類の添付が必要となります。
・本人が記載する申告書 ・市区町村に保育所等の利用申込みを行ったときの申込書の写し |
ハローワークは審査の際に上記追加書類をもって、以下の点を確認することとなりました。
・利用を申し込んだ保育所等が、合理的な理由なく、自宅又は勤務先からの移動に相当の時間を要する施設のみとなっていないこと ・市区町村に対する保育利用の申込みに当たり、入所保留となることを希望する旨の意思表示を行っていないこと |
また本人が記載する申告書には下記のような内容の記載を求める予定となっております。
・利用申込みを行った日 ・利用開始希望日 ・利用保留の有効期限 ・利用内定の辞退をしたか否か ・利用申込みを行った保育所等の中で、自宅または勤務地から最も近隣の施設名と通所時間(片道) ・通所時間(片道)が30分以上の場合、その理由(申し込んだ保育所等が通勤経路の途中にあるため/30分未満で通える保育所等が存在しないため/子に特別の配慮が必要であり、30分未満で通える保育所等では対応できないため など) |
【4】実務のポイント
今回の見直しは、子が1歳に達する日または子が1歳6ヶ月に達する日が施行日(令和7年4月1日)以後となる被保険者が、育児休業給付金の期間延長の申請をした場合に適用することとなっております。
上記期間に延長申請を行うこととなり得る社員にはあらかじめ今回の見直し内容の説明をし、書類の準備をお願いする必要があります。
参考
雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案 概要(育児休業給付関係)
この記事を書いた人
平成29年入社 早稲田大学卒 大学卒業後は、ブライダル関連の上場企業でサービス業に従事。その後、エスティワークスに参画し社会保険労務士の資格を取得。丁寧な業務遂行と持ち前のトーク力で多くのお客様の信頼を得ている。