事例紹介

CASESTUDY #05

このたび、会社に損害を与えて退職する予定の社員がいます。
損害相当分を賃金から相殺控除して振り込んでも問題ないでしょうか?

[ この事例の回答 ]
賠償金額の一方的賃金相殺は許されませんが、
合意相殺ならかまいません。

労働基準法の大原則として「賃金全額払いの原則」というものがあります。
いかに会社側に相殺すべき債権が存在していたとしても一方的に賃金から相殺控除することは許されません。
しかし、労働者側と合意のうえでなされるものについては違反にはなりません。
以下裁判事例を提示します。

「労働者がその自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、右同意を得てした相殺は右規定に違反するものとはいえないものと解するのが相当である。もっとも、右全額払いの原則の趣旨にかんがみると、右同意が労働の自由な意思に基づくものであるとの認定判断は、厳格かつ慎重に行われなければならないことはいうまでもないところである。」
平成2年 最高裁 日新製鋼事件

したがって、賃金相殺については労働者側と十分に話し合いを行ったうえで覚書を取り交わしておくことがポイントとなります。
また労働者と連絡がつかない場合には最終給与は振り込まずに「直接渡すので会社にくるように」と郵便を出しておくという方法もあります。
そうすれば労働者と話し合いする場ができますので、そこで合意相殺に関する話し合いを進めていけばよいでしょう。